判決全文
令和6年(オ)第720号、第721号 損害賠償請求本訴、同反訴事件令和8年7月16日 第一小法廷判決 主文 原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
1 職権をもって調査すると、記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。
⑴ 第1審本訴被告は、労働組合法11条の登記がされた法人である労働組合であって、その規約においては、代表者は同法上の総会によって選任される旨が定められている。
⑵ 第1審本訴原告は、令和2年6月、第1審本訴被告の代表者を、令和元年6月に代表者に重任された旨登記されていたAとして、本件本訴を提起し、Aは、第1審本訴被告の代表者として、令和3年1月、本件反訴を提起した。第1審が、令和5年4月、本件本訴、本件反訴のそれぞれについて請求を一部認容し、その余の請求を棄却したところ、双方から控訴が提起され、原審は、令和6年1月、各控訴を棄却した。本件訴訟の第1審本訴被告に係る訴訟追行は、その代表者をAとして行われたものであった。
⑶ 第1審本訴被告の組合員が第1審本訴被告に対して提起した別件訴訟において、令和6年2月、Aを代表者に選任する旨の平成27年から令和5年までの間における各総会決議がいずれも不存在であることを確認する旨の判決がされ、同判決は、令和7年7月、確定した。
2 上記1の経緯によれば、本件訴訟は、第1審本訴被告について、代表権を欠く者を代表者として提起・追行されたものというべきである。
したがって、原判決には、民訴法312条2項4号に該当する事由がある。原判決は、破棄を免れない。
3 ところで、第1審本訴被告は、当審に令和8年4月27日付け及び同年5月18日付けの各書面を提出し、令和6年5月及び令和7年9月に開催された各総会において、改めてAを代表者に選任する旨の各決議がされ、同人によってこれまでの訴訟行為が追認された旨を主張している。これに対し、第1審本訴原告は、当審に令和8年5月19日付け書面を提出し、第1審本訴被告の上記の主張を争うことを明らかにしている。そこで、上記各決議の存否や効力の有無など、第1審本訴被告の上記主張の当否について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。なお、代表権の有無は職権探知事項であるから、本件において原判決を破棄するについては、必ずしも口頭弁論を経ることを要しないと解するのが相当である(最高裁昭和62年(オ)第685号平成19年3月27日第三小法廷判決・民集61巻2号711頁参照)。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 ( 裁判長裁判官 宮川美津子 裁判官 安浪亮介 裁判官 堺徹 裁判官 中村愼 裁判官 阿多博文)