判決全文
令和6年(あ)第1657号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害被告事件令和8年4月21日 第三小法廷決定 主文 本件上告を棄却する。
理由 弁護人西田隆二ほかの上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
所論に鑑み、⑴第1審判決判示第1の入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの。以下「官製談合防止法」という。)8条違反、⑵同第2の同条違反、刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの。以下同じ。)96条の6第1項の公契約関係競売入札妨害の各犯罪事実に関し、職権で判断する。
1 原判決が是認する第1審判決判示第1及び第2の各犯罪事実の要旨は、次のとおりである。
被告人は、宮崎県日南市副市長として同市発注工事等の入札及び契約等に関する事務を指揮監督するとともに、日南市指名競争入札参加者資格等審査委員会委員長及び日南市公正入札調査委員会委員長としての職務に従事していたものであるが、
⑴同市が平成30年3月2日に入札を執行した道路災害復旧工事の条件付一般競争入札(以下「入札㋐」という。)及び同市が同月23日に入札を執行した道路災害復旧工事の指名競争入札(以下「入札㋑」という。)に関し、その職務に反し、各入札に先立ち、同年1月18日頃から同月23日頃までの間、建設会社の代表取締役でありB地区建設業協会会長を務めていたAに対し、各入札に関する秘密事項である予定価格に近似するおおむねの査定決定額を教示し(以下「第1の行為」という。)、もって入札等に関する秘密を教示することにより、入札等の公正を害すべき行為を行い、⑵同市が令和2年2月14日に入札を執行した道路災害復旧工事の指名競争入札(以下「入札㋒」という。)に関し、その職務に反し、Aと共謀の上、入札に先立ち、令和元年11月頃、Aに対し、入札に関する秘密事項である予定価格に近似するおおむねの査定決定額及び工法を教示し(以下「第2の行為」といい、第1の行為と併せて「本件各行為」という。)、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、入札等の公正を害すべき行為を行った。
2 原判決が是認する第1審判決の認定及び記録によると、本件の事実関係は、次のとおりである。
⑴ 日南市における入札では、その予定価格及び工法は、入札前に、一般競争入札の場合はインターネット等により公告され、指名競争入札の場合は指名業者に通知される運用がされていたが、同公告又は通知前は、これらの情報は公表されておらず、予定価格の算定の基となりそれに近似する査定決定額や工法は関係職員しか知り得ない情報として管理されていた。
⑵ 日南市が平成30年3月2日に入札を執行した入札㋐では、同年2月8日に入札公告がされ、同公告において予定価格が公表されており、同市が同年3月23日に入札を執行した入札㋑では、同市が同月14日頃に指名業者に宛てて入札執行通知書等を発送し、同通知において予定価格が公表されており、同市が令和2年2月14日に入札を執行した入札㋒では、同市が同月5日頃に指名業者に宛てて入札執行通知書等を発送し、同通知において予定価格及び工法が公表されていた。
⑶ 日南市の建設業者らは、Aが会長を務めていたB地区建設業協会の主導の下、従前から談合を行っていた。
3 所論は、予定価格及び工法が入札前に公表される場合、全ての業者が予定価格及び工法を把握した上で入札をすることになるから、その公表前に一部の業者がこれらの情報を知ったとしても入札の公正は害されないなどとして、各罪は成立しない旨主張する。
4 しかしながら、副市長であった被告人は、本件各入札に際して予定価格及び工法が事前公表されるより前に、関係職員しか知り得ない情報として管理されていた各工事の予定価格に近似するおおむねの査定決定額や工法を、建設会社の代表取締役であり談合を主導していた前記建設業協会の会長であるAに対して教示したものである。このような事実関係の下では、本件各行為は、秘密を教示することにより、特定の事業者のみに事前準備を可能にさせ、又は談合を助長するおそれがあるものと認められ、その後予定価格等が事前公表されることを踏まえても、入札が公正に行われていることに対して疑問を抱かせ、その公正に正当でない影響を与えるものといえるから、第1の行為は、官製談合防止法8条にいう「公正を害すべき行為」に当たり、第2の行為は、同条にいう「公正を害すべき行為」及び刑法96条の6第1項にいう「公正を害すべき行為」に当たるというべきである。したがって、⑴第1の行為について官製談合防止法8条違反、⑵第2の行為について同条違反、公契約関係競売入札妨害の各罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の判断は正当である。
よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 ( 裁判長裁判官 平木正洋 裁判官 林道晴 裁判官 渡辺惠理子 裁判官 石兼公博 裁判官 沖野眞已)