判決全文
令和7年(さ)第1号 性的姿態等撮影未遂被告事件に係る略式命令に対する非常上告事件令和8年7月10日 第二小法廷判決 主文 原略式命令中、科料刑をもって被告人を処断すべきもの とした部分を破棄する。
理由 所沢簡易裁判所は、被告人に対する性的姿態等撮影未遂被告事件(同裁判所令和7年(い)第A167号)について、令和7年8月22日、性的姿態等撮影未遂1件の事実を認定した上、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」という。)2条2項、1項1号イ、同法附則2条、刑法18条、刑訴法348条を適用して、「被告人を科料40万円に処する。この科料を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間(端数を生じたときは、それを1日に換算する。)被告人を労役場に留置する。この科料に相当する金額を仮に納付することを命ずる。」との略式命令を発付し、同命令は、同年9月10日に確定した。
性的姿態撮影等処罰法2条2項、1項、同法附則2条によれば、性的姿態等撮影未遂罪に対する法定刑は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金であって、科料刑の定めはないのであり、原略式命令は、法定刑にない科料刑をもって被告人を処断すべきものとした点で、法令に違反していることが明らかである。本件非常上告は理由がある。なお、原略式命令は、科料の額を40万円と定め、労役場留置の期間を定めるに当たり1日の換算金額を5000円と定めた点においても違法であるが、これらは、科料刑をもって被告人を処断すべきものとした上記法令違反に伴って生じたものにとどまる。
刑訴法458条1号ただし書を適用すべきか否かについて検討する。同号ただし書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」とは、原判決の認定した事実に正しい法令を適用して新たに言い渡すべき判決が、原判決より利益なことが法律上明白である場合をいうものと解すべきである(最高裁昭和26年(さ)第5号同年12月21日第二小法廷判決・刑集5巻13号2607頁参照)。そして、本件において新たに言い渡すべき判決は、原略式命令の科した刑などを考慮すると、被告人を罰金40万円に処し、この罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置するとするのが相当であるところ、罰金刑と科料刑とでは科料刑の方が軽く、原略式命令の刑は上記罰金刑の場合と比較して不利益となるものではないから、同号ただし書を適用すべきではない。
よって、刑訴法458条1号本文により、原略式命令中、科料刑をもって被告人を処断すべきものとした部分を破棄することとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
検察官北岡克哉、同大山邦士 公判出席 ( 裁判長裁判官 高須順一 裁判官 三浦守 裁判官 岡村和美 裁判官 尾島明)